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経営トラブルQ&A
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- 個人破産した場合、どのような不利益がありますか。
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警備員や生命保険募集人等の仕事についている場合、一定の資格制限があります。
警備員や生命保険募集人等の仕事についている場合には、破産手続き開始決定から免責許可決定が確定するまでの間、資格制限があります。
免責許可決定というのは、裁判所が、残債務を返済しなくてもよいという決定をすることであり、通常はこの決定を得て、破産手続きを終了します。
弁護士、司法書士、税理士等も、上記の期間中の資格制限があります。
破産による資格制限を受ける職業についている場合には、まず、破産以外の方法を検討する必要があります。
しかし、このような資格制限以外に、個人の権利能力や行為能力が制限されることはありません。
破産すると選挙権がなくなるのではないか、と心配される方もいらっしゃいますが、そのようなことはありません。また、破産した場合には、信用情報機関に破産の情報が登録されることになり、破産手続き終了後、一定期間(5~10年程度)は金融機関からの借り入れができなくなります。
ただ、任意整理等、他の債務整理の方法によっても、破産の場合よりは期間は短くなるかもしれませんが、一定期間、信用情報機関に情報が登録されることは変わりません。破産のマイナス面も考慮した上で、適切な方法を選択し、早期に債務整理の手続きを開始することが、早期の再生につながると思います。
- 個人事業を行っていますが、事業不振のため債務が多額となり返済ができなくなってしまいました。債務を整理するには、どのような方法がありますか。
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①任意整理、②特定調停、③個人再生、④破産等の方法があります。
個人事業を行っている方を含め、個人の債務者が債務を整理するには、以下の方法があります。
①任意整理
弁護士が各債権者と個別に交渉し、支払方法や支払総額を定め、債権者の合意の上で返済を行っていく方法です。
②特定調停
簡易裁判所の調停で、債権者との間で支払方法や支払総額について合意を成立させ、返済を行っていく方法です。
③個人再生
裁判所に申立を行い、債務の一部の金額を原則3年間で返済する計画を立て、計画通り返済が終了すれば残金を免除してもらう手続きです。
住宅ローンを返済中の自宅がある場合、自宅を残したまま債務を整理することができる可能性があります。
④破産
裁判所に申立を行い、破産手続開始時の財産を債権者に分配した後は、債務の返済をすべて免除してもらう手続きです。
99万円以下の現金等、一定の財産は残すことができます。
債務の整理に、どの方法を取るのが適切かは、債務の総額や債権者の状況、債務者の方の生活状況や、今後の収入の予定等によって異なります。
どの方法が今後の再生のために最も適切なのかを、長期的な生活設計を立てた上で決めることが望ましいと思います。
- 新型コロナウイルスの影響で事業不振となったため、事業所の一つを閉鎖することとしました。閉鎖する事業所の従業員を解雇することはできますか。
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整理解雇の4要件を満たさない解雇は、解雇権濫用として無効となるおそれがあります。
新型コロナウイルスの影響により、様々な業種の会社が大きな打撃を受けています。
そのような状況において、何とかして事業を継続していくために、一部の事業所や店舗の閉鎖を検討する事業者も多いと思います。また、事業所や店舗の閉鎖はしなくとも、人員削減により、経営状況の改善を図ろうとする場合もあると思います。
しかし、新型コロナウイルスの影響により、経営状態が悪化したことで、直ちに従業員の解雇が認められるわけではありません。労働契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされており、解雇には正当事由が必要です。
特に、新型コロナウイルスの影響のために経営状態が悪化した場合の解雇は「整理解雇」にあたり、判例上の基準である「整理解雇の4要件」を満たす必要があります。
「整理解雇の4要件」は、次の通りです。
1、人員整理の必要性
単に「経営状態が悪化した」というだけではなく、人員削減をしなければならない客観的な状況が、経営状況を示す指標や数値により明らかであることが必要です。
2、解雇回避努力義務の履行
整理解雇を行う前に、配置転換や出向、希望退職の募集等、解雇を回避する努力をすることが必要です。
3、被解雇者選定の合理性
解雇される従業員の選定基準が合理的であり、具体的人選も合理的かつ公平であることが必要です。
4、解雇手続きの妥当性
解雇する前に、解雇される従業員や労働組合に対して、整理解雇を行う必要性等について十分に説明・協議し、納得を得るように努力する必要があります。事業継続のために、一部の事業所や店舗を閉鎖することがやむをえない場合であっても、従業員を解雇するにあたっては、整理解雇の4要件を考慮した慎重な対応が必要となります。
なお、近年は、上記の4要件をすべて満たさなくても、個別事情を総合的に考慮して、整理解雇を有効とする判例も出ています。
しかし、整理解雇を行う際には、上記4要件を十分に考慮する必要があることに変わりはありません。
- 新型コロナウイルスに感染した従業員を休業させる場合、休業手当を支払う必要がありますか?
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新型コロナウイルスの感染が明らかな従業員を休業させた場合には、一般的には、休業手当を支払う必要はありません。
労働基準法26条においては、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合に、使用者は従業員に対し、平均賃金の60パーセント以上の休業手当を支払わなければならないとされています。
そのため、休業手当を支払う必要があるかどうかは、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」にあたるかどうかによります。新型コロナウイルスの感染が判明し、従業員が業務に従事できなくなることは、一般的には「使用者の責めに帰すべき事由」によるものとは言えないので、休業手当の支払いは不要と考えられます。
この場合、従業員が被用者保険(会社員が加入する健康保険等)に加入していて、要件に該当すれば、傷病手当金が支給されます。また、発熱等の症状が出たため従業員が自主的に休んでいるときには、通常の病欠と同様に扱い、休業手当の支払いは不要です。
一方、従業員に発熱等の症状があるが、新型コロナウイルスに感染しているかどうか明らかでない場合に、使用者の自主的判断で休業させたときには、「使用者の責めに帰すべき事由」にあたり、休業手当を支払う必要があります。
なお、従業員が自主的判断で休業する場合、年次有給休暇を利用して休むことはできます。
しかし、使用者側から、一方的に年次有給休暇を取得したこととする取り扱いはできません。年次有給休暇は、原則として、労働者の請求する時季に与えなければならないものとされているからです(労働基準法39条5項)。
- これから取引をする会社の社長とは以前からの知り合いで、信頼関係があり、口頭で取引内容を確認しています。それでも、契約書を作成しておいた方がよいでしょうか。
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取引相手との信頼関係、人間関係を守るためにも、契約書をあらかじめ作成しておくことをお勧めします。
日常の生活の中で、スーパーで食品や衣類を購入するような場合は、わざわざ契約書は作成しません。
しかし、事業をしていく上で、継続的に取引をしたり、高額な物を購入するような場合、口頭の契約だけでは、後日紛争が生じてしまう可能性があります。口頭の契約では、聞き間違いや、誤解、記憶違い等が発生するため、契約の内容について、双方の認識が異なっているという事態が起こり得ます。また、契約をめぐって問題が生じた際、どのように処理をするのかをあらかじめ文書で定めておくことにより、無用な紛争を避けることもできます。
取引相手が知り合いだからと言って、紛争が生じないとは限りません。取引上での紛争が生じ、そこで契約内容について争いになることによって、相手方との信頼関係が壊れてしまうこともあります。その意味では、契約書をあらかじめ作成しておくことは、取引相手との信頼関係、人間関係を守ることにもつながると思います。
- 取引先から渡された契約書にサインする際に、特に注意することはありますか?
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まず、契約書の内容は、事前の合意内容と一致しているのか、全て読んで確認してください。
相手方が以前からの取引先であったり、知り合いであったりする場合、相手方を信用しているからといって、契約書の内容を細部まで確認せずにサインしてしまう、ということもあるかもしれません。しかし、それは非常に危険です。後に相手方と紛争となった場合、「契約書を読まずにサインしたから、そのような契約内容になっているとは知らなかった。」と言っても通用しません。
契約書の内容を確認する際には、一方的に相手方に有利な内容になっていないか、中途解約できる契約か、その場合の解約金は発生するのか等に特に気を付けてチェックする費用があります。
契約書の条項の意味が不明確な場合には、相手方にそれを伝え、双方の認識を合致させた上で、明確な文言に書き換える必要もあります。
契約書の文言が不明確なままの場合、後日、その解釈をめぐって紛争が生じることもありますので、契約書の内容に不安を感じる場合、事前に弁護士に契約書を見せて、相談することをお勧めします。